研究課題/領域番号 |
13440227
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 裕 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (20142698)
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研究分担者 |
長谷川 英祐 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (40301874)
工藤 慎一 鳴門教育大学, 学校教育一部, 助教授 (90284330)
山内 淳 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (40270904)
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キーワード | 捕食者 / 被食者 / 分断選択 / 節足動物 / 社会性進出 / 分子系統 / 種文化 / 行動変異 |
研究概要 |
本年度は、複数の捕食者-複数の被食者系の成立要因を幾つかのモデル動物を用いて行動生態学的に詳しく分析した。まず、同一種あるいはごく近縁種間において、捕食-被食者関係に大きな変異が存在するグループをとりあげ、相互作用に関連する形質の派生状況を系統学的におさえ、次に捕食者-被食者にかかる選択圧を行動・生態学的について詳しい比較研究を行った。 造巣性のスゴモリハダニ種群のハダニにおいて、巣サイズ変異が社会性のレベルに相関し、大きい巣ほど社会性が発展し、小さい巣の種ほど社会性の発展レベルが低いこと、さらに、それぞれの変異種を襲う天敵の種類相が、巣のサイズによって大きく変化していることを示し、それらを論文として投稿した。また、複数の捕食性天敵がこれらの社会性の発展に作用してきたこと、また社会性という「戦略」に対して、非社会性種に別の捕食者回避戦略、すなわち「巣による防護」が存在することを明らかにし、これも論文として投稿した。また、巣を集中させる(あるいは巨大巣をつくって集合する)か、散在させるかという、巣サイズに関連した行動変異も、天敵に対する"deluding"効果として、防御に機能していることを初めて実証することができた。さらに、この天敵の効果によって生じた社会性が、季節適応を通して変化していくことを明らかにし、論文として公表した。 他に、ハムシ、アリ等における同様の現象あるいはその基礎データを得ることができ、大きな成果をあげた。また、関連する理論研究の面において、同種内におけるオス-メス分化の必然性について、新たな理論を展開し、論文として公表した。 これらの研究は、多様な捕食圧が被食者の対捕食者戦略を分断する選択要因となりうることを具体的に示し、同時に系統のまったく異なる節足動物において社会進化が同じ選択圧によって収歛しうることも示している。つまり、天敵類の捕食圧が被食者の戦略を分断し、それが種分化、多様化を生み出すことがあるという仮説を通して実証することができた。
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