警告色の擬態進化の総合的解明にむけて

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13440230
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 西田 隆義 京都大学, 農学研究科, 助手 (60208189)
• キーワード: 警告色 / 進化 / 体色 / 捕食 / 被食 / 色覚 / ミュラー式擬態 / ベーツ式擬態

研究概要

不味で警告色を示しさらに擬態関係および捕食-披食関係にあるホシカメムシの系において、生息場所の色環境と体色を携帯式分光色差計によって測定し、両者の関係について解析した。警告色種はいずれも、体色の反射率が周囲の色環境よりも高いかあるいは反射率曲線の形状が異なっており、目立つことが明らかとなった。しかし、捕食種と被食種を比較すると、被食種の方が反射率がはるかに低く、捕食者にくらべて相対的に目立ちにくかった。さらに、400〜700nmの可視光領域の反射率を平均し、色覚を持たない捕食者に対する警告色の程度を比較したところ、被食種はほぼ周囲の反射率に等しかったのに対し、捕食種は周囲の色環境よりもはるかに明るかった。このことは捕食種は、潜在的捕食者が色覚を持つ持たないにかかわりなく常に目立っている一方,被食種は色覚を持つ捕食者に対してのみ目立っていることを示している。したがって、被食種の体色には、齧歯類等の夜行性で色覚が乏しい捕食者を避ける機能があると推定された。すなわち、警告色には2つのタイプがあり、光環境にかかわらず常に目立つものと、日中の光環境においてのみ警告色として機能するものがあることがわかった。現時点では、両種間に見られる擬態関係においては、捕食種がモデルであり被食種がミミックであると推定され、ベーツ式擬態の要素があるものと考えられた。これは、警告色種同士の擬態関係をミュラー式擬態とみなす進化生物学における一般的見解と異なっていた。

研究成果

• [文献書誌] Matsumoto, T., Itioka, T., Nishida, T., Inoue, T.: "Introduction of parasitoids has maintained a stable population of arrowhead scales at extremely low levels"Entomologia Experimentalis et Applicata. 106・2. 115-125 (2003)
• [文献書誌] Matsumoto, T., Itioka, T., Nishlda, T.: "Rapid change in the settling mode of the arrowhead scale, Unapsis yanonensis, as a way to avoid two introduced parasitoids, Aphytis yanonensis and Coccobius fulvus"Entomologia Experimentalis et Applicata. 107・2. 105-113 (2003)
• [文献書誌] Matsumoto, T., Itioka, T., Nishida, T.: "Is one parasitoid enough? A test comparing one with a pair of parasitoid species in the biological control of arrowhead scale"Population Ecology. 45・2. 64-66 (2003)
• [文献書誌] Matsumoto, T., Itioka, T., Nishida, T.: "Cascading effects of a specialist parasitoid on plant biomass in a citrus agroecosystem"Ecological Research. 18・6. 651-659 (2003)
• [文献書誌] Matsumoto, T., Itioka, T., Nishida, T.: "Is Spatial Density-Dependent Parasitism Necessary for Successful Biological Control? Testing a Stable Host-Parasitoid System"Entomologia Experimentalis et Applicata. 110・3. 191-200 (2004)
• [文献書誌] Matsumoto, T., Itioka, T., Nishlda, T.: "Cascading effect of a specialist parasitoid on plant biomass in a Citrus agroecosystem"Ecological Research. 18・6. 651-659 (2003)
• [文献書誌] 西田隆義: "昆虫学大事典(分担・生活史 P.479-484)"朝倉書店. 1220 (2003)