研究概要 |
メチオニン生合成の鍵段階の酵素であるシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)の発現はmRNAの安定性の段階でフィードバック制御されており,しかもこの制御にはCGS遺伝子の第1エキソンにコードされるアミノ酸配列がシスに働く.また,シロイヌナズナのmtol変異はこの制御が欠損している.この制御に機能している制御因子を遺伝学的に明らかにするため,制御に関わる変異株の分離を行っている.Green fluorescent protein (GFP)レポーター遺伝子に野生型CGSの第1エキソンを、つなぎ、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターの制御下に置いた融合遺伝子を持つトランスジェニック・シロイヌナズナを親株としてGFP蛍光が増加した変異株のスクリーニングを行った.昨年度来の計約20万株のスクリーニングにより,12株の候補株を得た.これらの候補株について順次,遺伝解析ならびにCGSの第1エキソン領域の塩基配列の解析を行った.制御因子はトランスに作用すると期待されるが,本研究はCGSのフィードバック制御を解析していることから,反応産物も当然ながらトランスに作用する.従って,変異がシスに作用するかトランスに作用するかの判断には注意が必要である.12株の候補株のうちの10株では,内在性CGSタンパク質の蓄積レベルには野生型株と比べて変化は見られず,シスに作用する変異と考えられた.塩基配列の解析により,これらのうちの8株ではCGSの第1エキソンに変異が見いだされ,mtol変異タイプと考えられた.残り2株については,内在性CGSタンパク質の蓄積レベルも野生型株に比べて増加しており,トランスに作用すると考えられる.また,CGSの第1エキソンには変異が見いだされなかった.したがって,制御因子に生じた変異である可能性がある.
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