研究概要 |
ダイズβ・コングリシニンのβサブユニットプロモーターの硫黄栄養応答領域(βSR)をカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターの-90bpの位置に3つタンデムにつないで挿入したキメラプロモーターは,本葉においても硫黄欠乏応答を示す.このプロモーターの下流に発光クラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をつないだDNAを導入したシロイヌナズナ株(NOB株)を用いた解析を行った.O-アセチルセリン(OAS)は硫黄欠乏応答の鍵になると考えられる代謝産物であるが,NOB株のGFP蛍光は硫黄十分条件下でもOAS処理によって増加した.一方,グルタチオン処理によってNOB株のGFP蛍光は硫酸イオンの多寡にかからず抑えられた.これらの結果により,βSRが硫黄欠乏応答全般に中心的な役割を担っていることが示された.また,サイトカイニン処理によってNOB株のGFP蛍光が増加することが見いだされた.内在性の硫黄応答性遺伝子の発現もサイトカイニンに対して硫黄欠乏時と同様の応答を示した.しかしながら,硫黄欠乏によってサイトカイニン濃度は変化しないので,両者に対する応答は別の経路であると考えられる.βサブユニット遺伝子はメチオニンによつて発現抑制を受けるが,メチオニンを過剰に蓄積するmto1変異をNOB株に導入すると,種子ではGFP蛍光が抑制されたが,本葉では影響が見られなかった.一方,全長のβサブユニットプロモーターにCaMV35Sプロモーターのエンハンサー領域をつないだ場合には,本葉においてメチオニン応答を示した.硫黄栄養に対する応答機構は組織によって異なることが示された.
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