研究概要 |
本年度は、1)温度サイクルこよる活動リズムの誘発とPERタンパク質発現のメカニズムの解析と平行して、2)温度周期による振動機構へのperiod遺伝子周期的発現の関与についても検討を進め、以下の結果を得た。 1.恒明条件下で無周期的活動を示しているショウジョウバエ野生型に温度サイクル(25℃12h:30℃12h)を与えたところ、高温期開始6〜7時間後に最初の強い活動ピークを示し、その後ピークは次第に後退し、やがて高温開始後9時間の位相で安定して同調を示した。 2.一度だけ5℃上昇または降下を与えたばあいには、上昇では6時間後に、降下では18時間後に活動のピークが現れ、その後弱いながらリズム継続することが観察された。ウエスタンブロットによる解析で、温度上昇後に活動に対応して14間後にPERタンパク質のピークが現れた。これらの事実は、温度ステップが分子レベルで時計の再駆動を引き起こすことを示唆している。 3.period^<01>, timeless^0, cycle^0, dClodk^<Jrk>の無周期突然変異系統で、活動リズムをいろいろの長さの温度サイクル下で計測した。その結果、cyc^0, dClk^<Jrk>では温度への直接反応としての外因的なリズムが現れるだけであるが、per^<01>, tim^<01>では温度周期と活動リズム位相角が温度周期の長さに応じて変化することや、温度周期から恒温に移行後もしばらくリズムが継続することなど、背後に自律振動体の関与を示唆する結果が得られた。これらの結果は、per^<01>, tim^<01>が欠損していてもcyc^0, dClk^<Jrk>など転写活性化因子が関与するper非依存的振動機構が存在すること、またそれが温度依存的振動を駆動する可能性を示唆している。
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