研究概要 |
二枚貝類には性特異的mtDNAが存在し、両者は塩基配列レベルで違うことが知られているが、そのゲノム構造については不明であった。 そこで本年は別亜綱(異歯亜綱、古異歯亜綱)に属する二枚貝類についてゲノムの構造解析を行った。アサリRuditapes philippinarum、ドブガイAnadonta woodianaの雌雄特異的mtDNAを対象として、昨年度の研究によって得られた性特異的CO1遺伝子および12SrRNA, CytB遺伝子の部分塩基配列から外側向きのプライマーを作成し、long PCRによりの全長を増幅、クローン化した後、その全塩基配列を決定した。その結果、ドブガイではコードされている遺伝子の数は同じであったが、少なくとも4つのtRNA遺伝子と3つの蛋白質遺伝子の位置が異なっていることが分かった。また、アサリではゲノム構造はほぼ向じであったが、雌型mtDNAではrRNA遺伝子が重複していた。これらは、雌雄のmtDNAのゲノム構造が異なることを示した初めてのデータである。 なお、遺伝子配置および遺伝子の塩基配列の分子系統学的解析から両者の性特異的mtDNAは種の分岐後にそれぞれの系統で独立に生じたと考えられた。そこで、古異歯亜綱について近縁種の部分的ゲノム構造を調べ、ドブガイとの類似を比較した。その結果、ドブガイの雌雄ゲノム間で認められた遺伝子配置の主要な変化は雌型の系統でのみ生じたと考えられた。 アサリでは遺伝子重複が雄型mtDNAにはないことから、遺伝子重複は雌型の系統でのみ生じた可能性が高い。これらの結果を合わせて考えると、観察されたゲノム構造の主要な変化はいずれも雌型の系統で生じており、雌型ゲノムの構造が不安定であることが示唆される。
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