研究概要 |
和歌山県に生息するタイワンザルとニホンザルの交雑群より約170個体の試料を採取し遺伝子分析を行った。種を判別するのに有効な核遺伝子を探索した結果、natural resistance-associated macrophage protein 1(NRAMP1)遺伝子のintron 5領域内の塩基置換多型を発見した。この核遺伝子標識と血液タンパク質の遺伝子型解析から、調査群では急速に交雑が進行していることが明らかになった。また,交雑状況に関してAFLP分析の有効性を評価するために基礎的な実験をおこなった。さらに、ミトコンドリア遺伝子とY染色体遺伝子の分析から、交雑は野生化したタイワンザルの群れに在来のニホンザルのオスが移入して進んでいることを証明した。 移入種生息域の拡大を検討するため、伊豆大島に生息する移入種を調査した。島内各所から糞試料を採取しミトコンドリア遺伝子を分析して、当該種はタイワンザルであること、起点となった飼育施設から2方向に拡大が進んだことを明らかにした。この分析結果をまとめ論文として公表した。 千葉県房総半島では先端の白浜町で野生化した外来種の群れが確認されている。この群れと丘陵地帯に生息する在来のニホンザルが交雑しているかは不明であった。この可能性を調査するために血液タンパク質とミトコンドリア遺伝子を分析した。丘陵地域のニホンザルでは交雑の証拠は認められなかった。一方、移入種のミトコンドリア遺伝子分析より、当該種はアカゲザルであることが判明した。しかし、移入種群内で交雑が起きているかについては分析できなかった。以上の調査結果を論文として公表した。 青森県下北半島ではタイワンザルの群れが飼育されておりニホンザルとの交雑が危惧されてきた。この群れは本年度に当該地より除かれることになり、群内での交雑の有無を判定するために試料を採取し現在分析を進めている。
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