研究概要 |
我々のこれまでの研究で、ZnTe(100)面上に分子線エピタキシー法(MBE)によりCdTeおよびCd_<1-x>Mn_xTeを成長させ、格子歪みによる自己組織化ドットの作製を行ってきた。本研究では、1.障壁層を混晶にすることにより電子・正孔の閉じ込めエネルギーを変化させる(バンドギャップエンジニアリング)、2.ドット層/障壁層を繰り返し成長した積層構造(ドット超格子)を作製する、の2点のテーマの研究を行った。 1.障壁層選択によるバンドギャップエンジニアリング ドットを挟む障壁層をZnTeの代わりに(Zn,Mg)Te混晶として、その上にCdTeドットを成長させた。フォトルミネッセンス(PL)測定を行ったところ、発光強度の温度上昇に伴う低下がZnTe上のドットの場合に比べて抑制されるなど、発光特性の温度依存性が著しく改善されることがわかった。これは障壁層のバンドギャップ増加により電子・正孔がより強い閉じ込め効果を受けたためであると考えられる。また同様に(Zn,Mg)Te上に(Cd,Mn)Teドットを作製し磁場中でPL測定を行ったところ、巨大ゼーマン分裂による発光エネルギーのレッドシフトが見られ、そのシフト量は正孔のより強い閉じ込めから予想される値に近いことがわかった。 2.ドット超格子 ICd(Mn)Teドット層/ZnTe障壁層を数十周期繰り返した周期構造を作製した。PL測定においてはドット単一層の試料からのスペクトルとは異なり、2本の発光線が観測された。そのうち高エネルギー側の発光線は個々のドット中の孤立した量子準位からの発光で、低エネルギー側の発光線は縦方向に隣接したドット間の結合による準位からの発光と考えられる。ZnTe障壁層幅の異なる試料においては、低エネルギー側の発光線のエネルギーは障壁層幅に依存して系統的に変化することを見出し、ドット間の縦結合による準位であることが確認された。
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