研究概要 |
有機ELディスプレイの製品化が実現され,有機素子実用化への扉はすでに開け放たれたといえるが,そのドライバーに利用可能な微細な有機半導体素子など,多様な有機素子の実現にはまだ解決すべき基本的課題が多く残されている。これまで有機薄膜成長に始まり,その基本物性,デバイス物性が様々な形で研究されてきたが,特に有機分子の特徴に関係した以下の基本的課題がいまだに未解決であり,実際の有機半導体素子実現のため早急に研究する必要がある。 (課題1)パターン状に製膜後の有機分子の拡散とそのタイムスケール(有機ミクロ構造形成の可否)。 (課題2)凸凹や異なる物質が近接存在するトポグラフィカルな基板上への有機薄膜成長。 (課題3)埋もれた有機/無機界面の情報およびその影響。 本研究では,上記の(課題1)パターン状に製膜後の有機分子の二次元拡散,(課題2)凸凹や異なる物質が近接存在するトポグラフィカルな基板上への有機薄膜成長,に関する単分子層レベルからの知見を光電子放射顕微鏡(PEEM)とメタステーブルHe原子をプローブとするメタステーブル電子放射顕微鏡(MEEM)によるリアルタイムイメージング法により直接得ることを主目的としている。本年度は,上記二種類の実験法によって,不活性基板表面上に作成されたフタロシアニン薄膜のミクロ構造が分子の拡散によって崩れることや,SiO2パターン/Si(100)上へのフタロシアニン蒸着膜の成長においてSiO2パターンエッジでの分子配向が異なることをイメージングすることに成功した。
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