研究分担者 |
日野 照純 千葉大学, 工学部, 助教授 (10105827)
関根 智幸 上智大学, 工学部, 教授 (60110722)
石橋 幸治 理化学研究所, 半導体工学研究室, 先任研究員 (30211048)
青木 伸之 千葉大学, 工学部, 助手 (60312930)
山本 和貫 千葉大学, 工学部, 助教授 (90251181)
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研究概要 |
本研究は,単層および多層カーボンナノチューブ(CNT)における本質的な伝導様式の差異を詳細に調べ,その原因の解明と「朝永・ラッティンジャー(TL)液体モデル」の適用の可否について検討を行うことを目的としている.そのため,本年度は,以下の実験を中心に研究を行った. 1.加熱精製おけるCNTの物性変化 アーク放電法で作製したCNTは,陰極堆積物中にアモルファスカーボン等の不純物とともに得られるため,酸素中での加熱精製が必要となる.本研究では昨年度より引き続き,ESR測定による加熱精製時間経過における不純物の除去の様子と,CNTにおけるg値やスピン帯磁率の変化を,室温から100Kまでの精密測定により詳細に調べた.これらの成果は,国際会議{LT23(広島)とNanoMES2003(アリゾナ)}にて報告した. 2.CNTと金属電極との接触抵抗の低減 CNTにおける本質的な伝導特性の評価を行うためには,CNTと金属電極との良好な接触特性が必要となる.特に,CNTの電気伝導特性にみられる「TL的」振る舞いは,CNTと電極との接触部分で起こっているとの報告もあり接触抵抗の低減は不可欠となる.そこで電極材料としてチタンを用い,CNTとの接触を確保した後に,本研究費で導入した卓上ランプ加熱装置にて,Ar・H_2混合ガス雰囲気中で700℃・1分間の高速熱アニールを行い,接触部分をカーバイト化させることにより,2端子測定の電気抵抗値を1桁以上低減することに成功した. 3.通電破壊によるCNTの層数制御と伝導特性の変化 高バイアス電圧印加での通電によってCNTの外層を破壊していく方法に着目し,それによる層数制御ならびに伝導特性変化を試みた.バイアス電圧を上げていくと,3V程度から電流値の階段状の減少が観測され,各段での1-V特性ならびに抵抗値の温度変化を調べた.TL液体モデルで説明される温度とバイアス変化による抵抗値変化のベキ乗は,破壊前には等しいのに対し,破壊が進むに従い互いにずれてきて,さらに破壊を進めると,温度変化によるベキ乗則がホッピング伝導的へと変化することが明らかとなった.これらの成果は日本物理学会と応用物理学会にて報告した.
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