研究概要 |
T^*型Cu酸化物高温超伝導体は、T型のLa_<2-x>Sr_xCuO_4、T型とNd_<2-x>Ce_xCuO_4と並んで、最も単純な結晶構造を有している。しかし、その物性研究は、1989年の発見以来、殆ど進展していない。その理由は、単結晶試料作製とドーピング制御が極めて困難であったからである。T^*型の特徴は、頂点酸素を片側だけにもつCuO_5ピラミッドの2次元ネットワークで構成されていることである。この頂点酸素が抜け易い事が、これまで結晶成長を困難にしていたが、逆に、この上下非対称な構造が他に無いユニークな物性を発現するものと期待される。また、これまでの研究では、T_cが30Kと低く、その原因が結晶作成/ドーピング制御上の問題なのか、T型の場合のようにストライプ秩序のゆらぎによる本格的な要因があるのかは解明するに値する問題である。 今年度の研究は、T^*型Cu酸化物の単結晶成長とドーピング制御を第1目標とした。T^*型の2種類の化合物、SmLa_<1-x>Sr_<x->CuO_4及び(Nd, Ce, Sr)_2CuO_4について溶媒移動浮遊帯域溶触(TSFZ)を用いた単結晶成長法を確立させるとともに、高圧酸素アニールによるドーピング制御により、優れた超伝導特性を示す単結晶試料を作成することに成功した。これらの試料を用いて、サブミリ波、遠赤外波長領域のいわゆるテラヘルツ帯での超伝導光学応答を測定し、光学型のジョセフソン・プラズマモードの存在を検証した。T^*型物質はCuO_2面の積層方向(c軸方向)からみると2種類の異なったジョセフソン結合が交互に連なったジョセフソン超格子となっている。その結果、光学型のジョセフソン・プラズマモードがテラヘルツ域に現れたと解釈できる。このモードは、テラヘルツ帯の光と直接結合する励起で、テラヘルツ波検出器あるいは発光素子としての応用面での可能性が期待される。
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