高温超伝導体は、超伝導CuO_2面がc軸方向に積層したジョセフソン接合超格子となっている。それを特徴づけるのはジョセフソン・プラズマと呼ばれる、テラヘルツ領域に固有振動数をもつ集団励起モードである。この集団励起は光とは直接結合しない縦励起モードである。光と結合する光学型(横励起)プラズマモードを作るには、CuO_2面間のジョセフソン結合強度をc軸方向に空間的に変調する必要がある。昨年度は、La計高温超伝導体をベースに、希土類Laを他の希土類元素に置換することにより、頂点酸素をCuO_2面の片側にしかもたないT^*型高温超伝導体単結晶を合成し、ジョセフソン結合強度を構造的に変調し、光学型ジョセフソン・プラズマの観測に成功した。 本年度は、外場によるジョセフソン結合強度の変調を試み、Y型高温超伝導体を対象とし、磁場を超伝導面に平行にかけ、面間に侵入するジョセフソン磁束がジョセフソン結合強度をどのように変調するかを調べた。その結果、T_c=60Kのアンダードープ結晶においては、1テスラ程度の磁場でジョセフソン磁束が2層間毎に交互に侵入することがわかり、c軸偏光光学スペクトルのテラヘルツ域に光学型ジョセフソン・プラズマモードが発生する事を検証した。ジョセフソン磁束が侵入している接合としていない接合との間で結合強度の差が生じたので、磁場によりT^*型構造に類似の状況を作り出すことに成功したものである。この結果は、1テスラ程度の磁場でテラヘルツ域の光学末区トルを操作できることを示したもので、テラヘルツ光源あるいはテラヘルツ検知器としての応用に道を拓くものである。
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