研究概要 |
当初計画に挙げていたInGaNよりも今後更に需要が高まると予想される短波長発光の光デバイスへの応用を視野に入れて、材料をInGaNならびにAlGaNと拡大した研究を展開したことを初めに記しておく。アブレーション粒子のエネルギー計測は本テーマの基本実験技術である。現有の超高速フレーミングストリークカメラを用いてGa, Al, In原子(またはイオン状態)の飛行エネルギー分布の3次元データを求めた。レーザーアブレーションではターゲットから噴出した粒子は相当な励起状態にあるために発光してプルームを形成している。プルームの運動状態を高速カメラにより観察してエネルギー分布を得ることができた。Ga原子がサーマルアブレーションにより約30eVのドリフトエネルギーをもつことが判明し、このエネルギーによる薄膜表面の衝突ダメージが発光特性の劣化を導いていることが明らかとなった。粒子堆積時の斜め入射や背景窒素ガスの衝突散乱効果を利用して堆積時のエネルギーを20eV以下に抑制することで高輝度GaN薄膜の成長に成果を収めた。 InGaNならびにAlGaNなど3元系の薄膜PLD成長に関してデュアルレーザービーム堆積を行い、Ga原子の表面再蒸発に関する基礎的な知見を多数得ることができた。またInGaNの代替になりうるZnドープGaNの成長と基礎特性について詳細な検討をおこなった。Znの深い準位をうまく利用した結果である。世界的にPLDによるGaN系半導体薄膜成長の研究が少なく、その意味では特徴的であり、工学的にも学術的にも貢献した量は大きいと考えている。
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