1.LB法および真空蒸着法によるヘテロ複合薄膜の作製と構造評価 ベキ関数型導電特性の発現を支配する構造要因の割り出しを目的として、アラキン酸、オクタデカンおよびそれらの重水素置換体と長鎖置換メロシアニン等とで作製した混合LB膜につき、原子間力顕微鏡、赤外および紫外-可視分光法、X線解析等による構造評価を行った。初年度は、各混合膜系が含む長鎖アルキル基が概ね全トランス型の形態をとり主軸が基板表面に対してはほぼ垂直に配向することを見出した。次年度には、アラキン酸-色素二成分系では色素に属するアルキル鎖が室温において熱運動の自由度を保持するが、この自由度はオクタデカンの添加によりほぼ完全に凍結されることを明らかにした。また、LB法による純フラーレン薄膜の作製を試み、在来法の改良により、従前の報告例の約3.5倍の光学密度を持つ薄膜の作製に成功した。 2.電極付きヘテロ複合膜試料の作製および電気的特性評価 メロシアニン-アラキン酸2成分系LB膜およびこれにオクタデカンを加えた3成分系多層LB膜を1対のアルミニウム電極で挟んだAl/Al_2O_3/L B膜/Al/Al_2O_3ヘテロ複合ダイオード試料の超低周波数帯域における電気容量および誘電損を測定し、ベキ関数型導電率の発現の仕方と膜構造との相関を検討した。誘電スペーサとして多層LB膜を用いた場合、ベキ指数値は成分比に依らずa【approximately equal】0.8と、ほぼ一定であり、単分子膜スペーサの場合と比べて成分比依存性が弱いことが見出された。これらの所見を踏まえ、ベキ関数型導電特性と膜構造およびダイオード構造との相関について新たな導電特性モデルを導いた。このモデルによれば、多層LB膜誘電スペーサの積層構造および電極形状の最適化によるベキ指数値aの広域制御の可能性が示唆された。
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