低温(約50K)から高温(約1400K)まで温度を変えることのできる試料マニピュレーターを整備したのち、高エネルギー加速器研究機構放射光施設(PF)のビームライン15Bに設置されている6軸表面X線回折装置を利用して実験を行った。超高真空装置内でSi(111)面の清浄表面である7x7構造を作製したのち、Agを蒸着して√<3x>√<3>構造を作製した。 微小角入射X線回折法により、√<3x>√<3>構造からの非整数次の反射を多数測定した。比較のために、約50Kの低温とともに室温でも測定した。独立な回折スッポットの数は23点である。得られた回折強度からパターソン図を作成すると、低温と室温では明らかな差が見られた。室温では、Ag原子間の相関を表すベクトルが1つであったのに対して、低温では、2つのベクトルが得られた。このことは、室温では、Agの三角形が対称性のよい位置にあるHCT(Honeycomb Chained Triangle)モデルで説明できるのに対して、低温では、Agの三角形が約6°回転したIET(InEquivalent Triangle)モデルに相当する構造が実現しており、しかも右に回転したドメインと左に回転したドメインとが存在していることで説明できることを意味している。実際に、最小自乗法により得られた結果は、第一原理の計算で予想された結果によく一致していた。他方、室温では、非等方的な温度因子考慮したHCTモデルでよく説明できることも分かった。 一方、試料の温度を変えながら迅速測定が行えるようCCD型X線検出器を整備して、相転移が変位型か、あるいは秩序・無秩序型か区別できるような実験の進めている。
|