研究課題/領域番号 |
13450020
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邉 聡 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00292772)
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研究分担者 |
古賀 裕明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 立方晶窒化ホウ素 / 薄膜堆積過程 / 古典分子動力学法 / 密度汎関数法 / 高速入射粒子 |
研究概要 |
立方晶窒化ホウ素(cBN)薄膜堆積過程を解明することを目指し、昨年度に引き続き強結合分子動力学計算と第一原理電子状態計算による検討を行った。 まず、グラファイト的BN(gBN)層へのイオン入射によって形成される構造が古典分子動力学計算と密度汎関数法計算とで異なったということを契機に検討を開始した強結合分子動力学計算については、本研究に適した強結合パラメータを求めるべく多数の試行計算を行った。その結果、体積によるエネルギー変化やgBN-cBN転移をおおむね再現できるようなパラメータを得ることは出来たものの、gBN層へのイオン入射で形成される多様な構造を満足できるレベルで再現できるパラメータを得ることは残念ながらできなかった。 そこで、残りの研究期間は第一原理計算による薄膜堆積過程解析に注力した。この際に、gBNへの高速粒子の入射を前提としていた研究方針を転換し、cBN表面上の拡散増強エピタキシーによるcBN薄膜成長の可能性を検討した。cBNに対する拡散増強エピタキシーの報告は実験・理論ともにまだ無いものの、実現可能であれば高速イオン入射による欠陥形成を抑制できる点で高品質膜の作製に大変有望であるからである。表面に吸着した原子の構造や原子移動に対するエネルギー障壁等を検討した結果、単一層の吸着がエピタキシャルな性格を持つこと、窒素の吸着が単層で飽和すること、ホウ素島状構造の上の吸着ホウ素の移動度が高いため平坦なホウ素面の形成が期待できること、過剰原子による欠陥がB-N交換反応で修復される可能性が高いこと、等を明らかにした。これらの結果は、cBN上での拡散増強エピタキシーによってcBN薄膜が成長可能であることを強く示唆するものであり、今後のcBN薄膜堆積研究に大変有用な知見と考えられる。
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