研究概要 |
単層,多層などカーボンナノチューブには幾つかの種類があるが,ガス吸着には,多孔性の点で優れた単層ナノチューブ(SWNT)が向いているので,これを吸着材とした。ナノチューブはその直径により吸着能が異なると予想されるので,直径の異なるSWNTを合成する方法の開発を行いながら,重量法および容量法による水素の吸着等温線の測定,ならびに昇温脱離装置の試作を行った。本年度に得られた成果を下にまとめる。 1.SWNTの作製と直径制御 SWNTの作製はヘリウムガス中でのアーク放電法により行った。直径の太いSWNTの作製には,硫黄を鉄族金属(Fe,Co,Ni)に添加し、金属/硫黄混合物を触媒とした。硫黄を添加しない場合は,平均直径は約1.2nmであるのに対して,硫黄を添加した場合は、平均直径は約1.5nmないし2.3nmまで太くなった。また,酸化雰囲気における熱処理により,SWNT先端を破る処理を施した試料も作製した。 2.重量法による水素の吸着等温線の測定 石英スプリングを用いた重量法により,低圧力領域(50Torr以下)において,水素ガス吸着等温線を測定した。直径約1.28nmのSWNTでは,マイクロ孔への吸着分は、77Kにおいて閉端チューブで約2.7重量%,開端チューブで5重量%,室温においては閉端チューブで約0.3重量%,開端チューブで約0.7重量%であった。 3.容量法による吸着等温線の予備測定 触媒金属とアモルファス炭素を含んだ未処理SWNTを用い,77Kにおいて水素に対する吸着等温線を4気圧まで測定した結果,約0.5重量%の吸着量を得た。 4 昇温脱離装置の試作と脱離スペクトルの予備測定 140K,1気圧で水素を10分間吸着させた後,毎分4度Cで昇温脱離測定を行った。質量分析計により水素の強度をモニターした結果,170K付近に脱離のピークがあることを見出した。
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