研究分担者 |
的場 修 神戸大学, 工学部, 助教授 (20282593)
志村 努 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (90196543)
荒川 泰彦 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (30134638)
芦原 聡 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10302621)
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研究概要 |
フォトリフラクティブ材料は,空間的に不均一な光の照射によって電荷移動が生じ,電気光学効果により光学定数が変化する材料であり,2次元並列情報処理デバイスとして実用化が期待されている。本研究の目的は,単純な量子井戸構造に代えて,トンネル障壁層を介して複数の特性の異なる量子井戸を結合させた非対称結合量子井戸構造を導入する事により,総合的に素子性能の向上を図ることにある。われわれはこれまでInGaAs/GaAs半導体量子井戸構造を持つフォトリフラクティブ素子を製作し,非対称結合井戸構造の導入により,広帯域化,高感度化を実証した。本年度は,材料系をワイドバンドギャップのGaNに代え,青紫から紫外域に感度を持つフォトリフラクティブ材料の開発に取り組んだ。その結果,第1の成果として,われわれはGaNの薄膜においてフォトリフラクティブ効果を世界で初めて実証した。材料はFeドープの半絶縁性GaN薄膜を用い,これに高エネルギーのヘリウムイオンを照射することにより深いトラップ準位を生成した。この材料に電極をつけ,横電場型のフォトリフラクティブ素子とし,アルゴンレーザー(波長363.8nm)を光源として2光波混合実験を行い,2光波の結合を確認し,結合ゲイン係数と時定数を測定した。2光波混合の光強度依存性や外部電場依存性を調べ,この現象が熱の効果ではなく,フォトリフラクティブ効果に依るものであることを確かめた。第2の成果としては,InGaNの量子井戸構造を作成し,波長405nmパルス幅100フェムト秒の光パルスを照射し,吸収スペクトルの変化を測定し,素子応用の基礎データを得たことが挙げられる。パルス照射直後にはバンドフィリングによる大きな変化が生じるが,これら速い現象が緩和した後に依然大きなスペクトル変化が残るされることを観測した。これは欠陥準位や不純物準位に電荷がトラップされていることを示唆し,フォトリフラクティブ効果の可能性を示すものである。InGaN量子井戸では格子不整合から来る大きなピエゾ電場が井戸内に生じるため,これを利用すると外部電場が不要になる。これは素子化を考えたとき大きな特長となる。
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