超音波の波面歪を補正し、より鮮明な画像を得るために、超音波の位相共役波を用いる提案がなされており、原理的な有効性は確認されている。本研究は、超音波送信子と位相共役波発生素子の間で超音波が共振形態をなすような映像・測定系を構築することを目的としている。研究2年目である平成14年度には以下の結果が得られた。 1 研究初年度の結果により選別された、超音波位相共役波を高効率で発生する圧電性PZTセラミックス(富士セラミックス社C2系列)を用いて、位相共役波発生素子(位相共役鏡)を製作した。この位相共役鏡を用いて、周波数3MHz〜8MHzで超音波の位相共役波を発生させた。その結果、周波数6.5MHzにおいて位相共役波反射率460%を観測し、本研究の目的の一つである高反射率化(100%以上)が達成された。 2 走査型超音波映像装置を作成した。この装置は、数10mm四方の領域の超音波エコー信号をCモードとして表示する機能に加え、超音波エコーを複数(数10点)の時刻においてサンプリングし、蓄積する機能を有する。これにより、3次元超音波画像信号の取得、あるいは通常の超音波画像と位相共役波超音波画像の切り替えが可能となった。 3 上記1により発生する超音波位相共役波の波面形状を、シュリーレン法により可視化し、観測した。高コントラストで波面を観察するため、ラマン・ナス回折光の干渉を利用する光学系を構築した。観察の結果、位相共役波の波面は入射波の波面と極めてよく一致することが見い出された。
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