研究概要 |
本研究の目的は,私たちが発見した超図形を可逆なミンコフスキー代数の中で体系的にまとめ,超図形理論を構築することであった.この目的に沿って,前年度に引き続いて研究を遂行し,次のような実績を得た. (1)超図形に関するミンコフスキー演算が結合的でかつ可換であることに着目して,超図形操作が並列計算によって効率的に実行できることを指摘した.図形に関する従来の並列計算の枠組みは,図形を小領域に分割し,領域ごとに計算するという並列化であった.しかし,ミンコフスキー演算は図形の大域的な性質にかかわるものであるために,この形の並列化は難しかった.本研究で構成したのは,領域分割ではなく演算ごとに分離するという新しい並列化の枠組みであり,演算が多段につながる場合に効果を奏するものである. (2)超図形理論をなめらかな曲線から多角形へ拡張する第二の方法を構成した.昨年度は,多角形がなめらかな曲線の極限と見なせることに着目して,極限操作による拡張を行った.これに対して,本年度は,多角形から出発して,今までの超図形とは独立に,多角形のみから生まれる超図形(これを超多角形と命名した)を構成した.ここでは,まず多角形を角度の不連続関数として表現しなおし、その表現の間の演算としてミンコフスキー和を定義しなおした.そして,この演によって超多角形を導入することができた. (3)超図形の物理的解釈に関しても解釈例を追加することができた.昨年度に得られた散水車の散水能力という超図形の解釈では,散水車が平行移動はできるが回転できないという不自然な前提が必要であった.一方,一定の方向へ風が吹いている環境で,殺虫剤を散布する場面などでは,散布車が回転しても超図形演算が意味をもつことなどを指摘することによって,より自然な超図形の解釈を見つけることができた (4)次元傾き単調曲線を軸のまわりに回転して得られる回転体のミンコフスキーアルゴリズムを拡張した.昨年度は,二つの回転体の回転軸が平行な場合を対象としたアルゴリズムを構成したのに対して,本年度は,回転軸が平行ではない場合にも使えるアルゴリズムを構成することができた.
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