研究課題/領域番号 |
13450040
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 健郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30209639)
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研究分担者 |
大橋 俊朗 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30270812)
佐藤 正明 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30111371)
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キーワード | バイオメカニクス / 細胞力学 / 細胞骨格 / 細胞小器官 / 顕微鏡 / 力学的適応反応 |
研究概要 |
血管壁の主要構成要素である平滑筋細胞は種々の刺激に応じて収縮・弛緩し血管径を変化させるほか、コラーゲンなど様々な物質を産生して血管壁を能動的に作り変えている。その収縮特性や物質産生は加えられる力学刺激に応じて変化し、例えば慢性的な繰返し引張により物質産生が増加するほか、収縮を繰返すと収縮速度が上昇し、収縮状態で放置すると消費エネルギーが減少するなど、能動的アクチュエータとしても興味深い特徴を有する。そこで本研究ではラット胸大動脈平滑筋細胞の力学特性、収縮特性を単一細胞レベルで詳細に調べ、力学的刺激との関連を明らかにすることを目的とした。研究初年度である本年度は、正常血圧および腎性高血ラット胸大動脈から得られた平滑筋細胞を弛緩状態で引張試験し、両者の力学特性を比較した。胸大動脈より酸素法にて平滑筋細胞を単離した後、最近、我々が開発した単離細胞用引張試験機にてその引張特性を計測した。即ち、細胞両端を細胞接着剤Cell-Takでコートしたガラスマイクロピペット(内径3〜15μm)で吸引・固定し、一端のピペットを移動させつつ細胞の形状変化を計測した。細胞の長軸長は両群間で有意差はなかったが、短軸長は高血圧群の方が正常血圧群よりも有意に太かった。細胞の初期弾性率は正常血圧群、高血圧群でそれぞれ10.2±1.7kPa(n=5)、4.3±0.5kPa(n=6)であり、高血圧群の方が正常血圧群に比べて有意(P<0.05)に小さかった。高血圧に曝されることにより、血管平滑筋は物質合成能が亢進し、これにより細胞内の収縮要素であるアクチンフィラメントが減少すると予想される。細胞内の生合成に関与するゴルジ体や粗面小胞体は膜主体の構造であり、線維主体のアクチンフィラメントに比べて剛性が低いと考えられる。高血圧ラットより得られた細胞の軟化はこのような線維性成分の減少により生じたと考えられた。
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