研究概要 |
これまでの研究から熱遮へいコーティング(TBC)の劣化は,TBCとボンドコートであるMCrAlYの界面に生成する熱成長酸化物(TGO)が熱応力を引き起こすことおよびこのTGOが多くの気孔を有するために応力集中源となり接合強度を低下させることが駆動力であることを提案してきた.昨年度の研究では,TGO内に発生する気孔を抑制し,界面強度の高いTBC作製を目標にボンドコート材料の改善を行った.その結果,微量Ce, Si添加により,TGOの酸化形態は顕著に異なり,木の根のようにボンドコート内部にTGOが成長し,くさび効果をもたらした.さらに,TGOの気孔発生要因であるNiやCoの酸化物を抑制することも可能となった.四点曲げ試験によるTBC/MCrAlY界面強度評価においては,従来のMCrAlYを使用したTBC材に比べ,MCrAlYにCe, Si添加したTBCは,ひずみ量にして3倍以上の強度向上が認めらた.今年度はCe, Si添加ボンドコート材料に関し溶射条件を変化させ,耐酸化および耐はく離性に優れたTBCの開発を目的とした.さらに,TGO内に生成する気孔を抑制するためには,初期に生成するAlの醸化物を緻密にすることが重要であるため,レーザ照射により緻密な酸化層を生成させ,TBC界面強度の向上および酸化特性の改善についても実施した. MCrAlYCeSiボンドコートを用いたTBCにおいては,溶射電流等を変化させることで,酸化物形態が大きく異なることを明らかにした.電流を低くし,パウダーを半溶融状態にしたもので木の根のようにボンドコート内部に成長するTGOを得ることができ,くさび効果により界面強度が向上した.また,従来からのMCrAlYボンドコートを使用した場合でも,ボンドコート溶射後,その表面をレーザで再溶融することにより緻密なアルミナ膜が生成し,良好な耐酸化特性を示すことを明らかにした.
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