研究概要 |
本研究は,近年急増している高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折の予防を目的とし,有効な骨折予防策として期待されている腰部プロテクターの設計要件を生体力学的に検討し,さらに個体別最適設計システムを構築することを目指すものである.平成13年度はその第1段階として,大腿骨頸部骨折を生じるような転倒を模擬したシミュレーションを実施可能なシステムの開発を行った. まず,従来研究代表者らが開発してきた個体別大腿骨有限要素モデル構築プログラムを改良し,実際の転倒を模擬可能な動的有限要素解析に適したメッシュ分割をされた大腿骨有限要素モデルを構築した.さらに,大腿骨を覆う筋・脂肪組織,皮膚組織を模擬した有限要素モデルと,その他の人体各部要素を等価質量を持つ剛体によりモデル化し,高齢老人女性の全身モデルを構築した.これにより転倒シミュレーションを行い,転倒時に作用する荷重方向,大腿骨の形態的特徴,骨粗鬆症の進行程度が大腿骨頸部骨折発生に及ぼす影響を検討し,個体の特徴および転倒条件と骨折発生の危険性との関連性を評価した. 次に,このモデルに対し,典型的な形状のヒッププロテクターを取付け,プロテクターの材質と構造の違いによる衝撃緩和効果を検討した.具体的には材質のヤング率,厚さ,プロテクターの内側と皮膚との接触面積の影響を評価した.その結果,中空なドーム状構造を持ち,かつ殻部の材料が低密度ポリエステルのような軟質材料であるものが効果的であることがわかった.
|