研究概要 |
本研究は,近年急増している高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折の予防を目的とし,有効な骨折予防策として期待されている腰部プロテクターの設計要件を生体力学的に検討し,さらに個体別最適設計システムを構築することを目指すものである.平成14年度は平成13年度までに開発した大腿骨頸部骨折シミュレーションシステムを改良し,臨床においてより実用性の高いシステムの開発を行った. まず,臨床診断用CTシステムにより再構築した大腿骨画像を用いたイメージベーストモデリングを行う個体別最適設計システムの可能性を検討した.調査の結果,CT機器のデータフォーマットであるDICOMを取り込むインターフェースを作ることで,市販ソフトウェアによりCT画像から輪郭形状の抽出が可能なこと,さらに抽出された輪郭から再構築された外形状にマップトメッシュ法を適用することにより,臨床上許容される程度の分解能で十分な精度の有限要素モデルの構築が可能であることがわかった.そこでDICOMインターフェースプログラムを作成し,その動作を検証した. 一方,シミュレーションシステムの臨床診断上の実用性向上のために,計算時間短縮方法を検討した.動解析結果を詳細に検討したところ,骨折部位での応力は衝撃中に応力波の重ねあわせによる影響をほとんど受けず,また作用合力の大きさと作用中心点の位置に依存することが分かった.そこで,簡単化されたモデルにより実際の転倒を模擬した境界条件による動解析を行い,衝撃力の合力ベクトルを求め,これを境界条件とした精密なモデルによる静解析を行う手法を提案した.検証の結果,精密モデルによる動解析と同程度の予測精度をより短時間で得られることがわかった.
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