研究概要 |
本研究では、高温における下限界近傍の疲労き裂進展挙動の把握と下限界のメカニズムと密接に関連するものとみられるナノおよびメゾスケールの構造に着目し、下限界近傍の疲労き裂進展と下限界挙動に関して、分子動力学を用いたナノスケール解析とともに,マクロスケールの実験とメゾスケールの観察よりアプローチする。 平成14年度に得られた主な研究成果は,以下の通りである. 1.真空条件下の下限界近傍および下限界以上の領域における高温疲労き裂伝ぱ実験を,ステンレス鋼SUS304に対して行った.温度としては,350℃,550℃および650℃を採用した。まず応力拡大係数範囲ΔK漸減法により疲労き裂進展下限界値を求めた。き裂進展の下限界現象が認められた後,最大応力拡大係数を上げた.その結果,大気中と同様,再びき裂進展が認められた.真空中のき裂伝ぱ速度da/dNは大気中のそれより低かった.下限界値近傍を除けば,da/dNとΔKの関係に対する温度の影響は小さかった。下限界値は大気中のものより高かった. 2.分子動力学法を用いて,鉄における下限界近傍の疲労き裂伝ぱのナノスケールシミュレーションを行った.モードIおよびモードIIのもとで疲労き裂進展のシミュレーションを行った。き裂面の原子を取り除いたモデルではモードIIでもき裂進展が認められた.混合モード下の疲労き裂進展に対する結晶方位の影響を調べた.その結果、混合モード下のき裂進展方向は,結晶の方位によりばらつくものの,円周方向応力の変動成分が最大となる方向にき裂が進展するという仮説による予測とほぼ一致することがわかった.
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