研究概要 |
1.SUS304ステンレス鋼平滑材の疲労特性を大気中,絶対圧1MPa程度の水素ガス雰囲気および窒素ガス雰囲気で試験した結果以下の結果を得た. (1)水素ガス雰囲気中の疲労き裂発生寿命は,大気中のそれに比べ長い傾向にある.窒素中も同じ傾向にあり,水素中には酸素や水分が存在しないことが原因と考えられる. (2)水素中のき裂伝ぱ速度は,大気中および窒素中に比べて速い. (3)水素中の破面は,大気中より平坦なファセットが増加するが,延性破面が支配的である. (4)破面には,不明瞭ではあるがストライエーションが存在する.(2)の結果はストライエーション間隔が広くなることでも確認された. 2.SUS304ステンレス鋼の疲労き裂伝ぱ特性に及ぼす水素ガス雰囲気の影響に関して,大気中,絶対圧0.15MPa程度の水素雰囲気および窒素ガス雰囲気下で疲労試験を行った結果,以下のことが明らかになった. (1)水素中におけるき裂伝ぱ速度の加速は,き裂先端にすべりが集中することによる.このことは,すべりを観察することで確認された. (2)水素中破面では平坦なファセットが増加する.この破面がき裂伝ぱ曲線に及ぼす影響は,一時的な加速と続いて起こる減速として現れる.ファセットの破面率は低く,水素中でのき裂伝ぱ加速の主因ではない. (3)大気中において微小穴から発生したき裂は停留挙動を示した.水素中においても,同様であったが,停留に至るメカニズムは両者で異なるようであった. 3.配管疲労試験においては,水素曝露後の疲労試験を行った.水素侵入特性,破面観察から,水素の影響を検討したが明確には認められなかった.さらに,工夫が必要である.
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