研究概要 |
本研究は、磁気ディスク記憶装置やマイクロマシンなど微小機械要素の潤滑技術に必須である、数分子厚さの潤滑膜の動的特性を解明し、ナノトライボロジー技術の確立に関するものである。本研究では、ナノメートル膜厚の潤滑膜の動的な状態を、リアルタイムに画像として直接可視化する技術を確立し、これを用いて潤滑膜の動的特性を解明することを目的とする。さらに、開発した可視化技術を用いて、潤滑膜の流動現象を明らかにする。本年度は、極薄の潤滑膜の可視化技術の確立を試みた。本研究では、可視化の方法として最適なものを選択するために、次の2種類の新規な光学的手法を検討した。すなわち、(1)ブリュースター角を利用した方法、(2)表面プラスモン共鳴を利用した方法、を検討し,本年度は、これら2種の方法のうち、汎用性に優れたブリュースター角を利用した方法の検討にリソースを集中し、重点的に研究を進めるものとした。磁気ディスク面上の分子膜の可視化は従来のブリュースター角およびエリプソメトリ顕微鏡では,十分なSN比が確保できず困難であることを理論的・実験的に示した.そこで,光学的に像の明暗を反転させ,差分処理を組み合わせた新規な計測法を考案し,SN比を数倍程度向上させ,磁気ディスク上の1nmオーダの厚さの分子膜の可視化を可能とした.磁気ディスク装置の潤滑分子膜の膜厚は1〜2nmであるので,実用的領域の可視化技術の基礎を確立できた.今後,光学系を改良し,1Åオーダの分子膜の直接可視化を試み,さらに流動特性の可視化を行う.
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