研究概要 |
本研究では超音波による含気マイクロカプセル破壊型DDSの欠点を補うため,衝撃波をこのカプセル破壊に利用して,位置制御ならびに薬物導入の向上に関する基礎的研究を行う.衝撃波は単発で圧縮波が先行する立ち上がり周波数の高い波であるが,その持続時間は短く持続する超音波に比べ単発でのエネルギーは小さい.この立ち上がり周波数(数ナノ秒と言われている)が高く,数百MPaの高い圧力レベルの衝撃波を使って効率よくカプセルを破壊し,エネルギーが小さいことで超音波を用いた場合に比べて生体組織が損傷をうけることが小さくなるというのが本研究のポイントとなる.このために把握しておくべき基礎的な現象として,(1)水中内で静止した含気マイクロカプセルに衝撃波が作用したときの変形挙動の解析とその破壊現象,(2)水中内で移動(並進・回転運動)している含気マイクロカプセルに衝撃波が作用したときの変形挙動の解析とその破壊現象,の2つが挙げられる.そのため,衝撃波管または超音波素子で発生させた平面衝撃波を水中内の静止・移動している含気マイクロカプセルに作用させ,その変形挙動ならびに破壊挙動の観察をストリーク・高速度カメラを用いて解析し,同時に既に開発した衝撃波作用時の細胞の変形挙動の数理モデルを用いてマイクロカプセルの変形挙動の解析を行う.また,効率的カプセル破壊のための最適な圧力レベルや衝撃マッハ数などの条件を理論的・実験的に探り,実用にむけた実験条件の比較・検討を行った. その結果,以下の2点が大きな成果としてあげられる (1)気泡内包マイクロカプセルの生成手法の確立 これは,ドラッグデリバリーシステムに用いる際のカプセルを試作し,その内部にガスを封入する際の条件を調べたものであり,この結果と前年度までに得られた気泡と弾性壁の相互作用を考慮することで,カプセル壁の弾性率を決定することができる.したがって,本年度のカプセル生成手法(弾性率などの材料的性質の決定)が,破壊用カプセルの決定的な条件となりえた. (2)圧電素子による衝撃波生成法の確立 カプセル内部での気泡変形挙動を観察するため,装置内部での微小な領域での観察が必要になると考えられ,そのための衝撃波発生装置として,圧電素子を用いた.電圧波形の制御を行うことにより,正の波を生成することができ,これを用いて,顕微鏡下のカプセルに作用させることができた.本年度の研究では,作用する圧力レベルが0.05MPa程度と低いため,内部で圧力波が弱められて,マイクロジェットが生成せず,破壊には至っていないが,圧力レベルを上昇,またはカプセル強度を落とすことによりそのシステムを確立していく方向性を得ることができた.
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