溶融ナトリウムの燃焼はその生成物が固相であることに由来して、(1)反応帯に吸込みが存在し、燃焼場の流動形態が変化する、(2)反応帯からの固相生成物の拡散、除去の過程が複雑である、(3)固相生成物による放射伝熱が重要な影響を持つ、という基本的な点で従来の基礎燃焼学で広く扱われてきた火炎現象と異なっている。本研究では基礎燃焼学の観点から、滞留する固相生成物による放射伝熱の影響を明らかにすることにより、溶融ナトリウムの燃焼機構を解明することを目的としている。本年度は3年計画の最終年度であり、初年度は固相生成物微粒子の挙動の詳細な検討とそれを吸収射出性媒体とした輸送方程式に基づく放射伝熱モデルを用いた数値解析により、ナトリウム燃焼における表面燃焼率やプールと火炎の距離に及ぼす溶融ナトリウム温度や雰囲気温度、雰囲気酸素濃度の影響ならびに放射伝熱の効果を明らかにした。さらに、この数値解析により得られた知見を基に溶融ナトリウム表面に形成される火炎を観察するための実験装置を設計・製作した。昨年度と本年度はこの実験装置を用いて多くの実験を行なった。本装置は、基本的には溶融ナトリウムプール表面の対向流拡散火炎を観察するものであるが、プールの外側を対向する一対のハネカムで取り囲み、ハネカム表面にメタンの予混合火炎を形成することによりハネカムに挟まれた空間を制御された放射場とすることができ、実験室規模の装置で安定した火炎の形成を実現した。計測された火炎高さは初年度の基礎的解析により説明できるものであり、さらに、二次元対向流拡散火炎の解析を行うことにより燃焼速度の特長を明らかにした。
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