研究概要 |
1.圧力こう配を伴う乱流温度境界層の風洞実験 昨年度から継続して,本研究室で開発した速度乱れと温度乱れの同時測定技術を適用し,速度場及び温度場の相互の関連を実験的に調べた。特に,壁近傍まで正確な乱流熱流束を測定可能なV型熱線マイクロセンサーと,空間および時間解像度の高い線径0.6μmの極細冷線プローブを組合せた同時測定に成功した。その結果,普遍対数温度分布など零圧力こう配流れで成立する現象が,逆圧力こう配流では破綻することを定量的に実証した。一方,境界層全体の特性量で整理した場合,速度場は非平衡であっても温度場に及ぼす逆圧力こう配の影響はほとんど認められなかった。従って,壁面摩擦係数が急減するにも拘わらず熱伝達率が維持されるため,損失の少ない高効率な熱流体機器を設計する上で逆圧力こう配の付加は極めて有効であり,その特性を把握することは非常に重要といえる。 2.圧力こう配を伴う乱流温度境界層における微細構造の解析 取得された波形データを基に,乱流熱伝達機構と運動量輸送機構の関連について,乱流の準秩序構造に基づく条件付きサンプリング法(四象限分類,重み付き確率密度関数,トラジェクトリ解析)およびバイスペクトル解析により詳細に検討した。その結果,逆圧力こう配流で運動量の輸送を担っている高周波数のスイープ運動と,運動量輸送について寄与が減少している低周波数のイジェクション運動は,どちらも熱輸送に対しては大きく寄与し,逆圧力こう配流れにおいて熱輸送が低減せず高い値に維持されていることが明らかとなった。 3.実験データベースの整理 取得された圧力こう配を伴う乱流温度境界層の実験データベースを整理し,インターネットにより国内外に公開した。今後,このデータベースは乱流数理モデルの性能評価および改善(ERCOFTAC)に資される。
|