研究概要 |
平成16年度は,細胞の接着性を定量的に測定する装置を開発した.本装置を用いて,骨髄間葉系細胞,軟骨細胞の培養担体への接着挙動を定量的に測定した.また,細胞凝集体の形成条件を様々な実験系で追求した.未だその成因は明らかになっていないが,フォトリソグラフィーを用いて作製した培養基材表面を用いることにより,間葉系細胞より様々な大きさの細胞凝集体を作製することが可能となった.基材表面に播種後48時間で比較的均一な凝集体が形成され,その接着性や伸展速度,分化度などを評価している. 総じて,振動の組織再生能に及ぼす影響には多くの不定要素が観測され,その効果の確実な記述には至らなかった.しかし,平成15年度以降にはその細胞接着との関連性が見いだされ始めている.また,その結果を得て細胞接着性及び接着力の定量評価を開始した結果,細胞,組織の機能発現に細胞接着性の時間変化が大きな影響を及ぼしている事実が見いだされた.特にフィブロインを担体として用いた軟骨再生における表面接着性の設計が,再生軟骨の機能制御に有用であることが示された. これら一連の研究結果を通じて,様々な物理環境設定により生体機能を育てる,「生体環境設計」なる方法論と設計論が見いだされ,その内容は書籍「機能設計から生体環境設計へ,富田直秀著(序論:「生命」を基本に置く医療を求めて-生命誌との関わり,中村桂子(JT生命誌研究館館長):丸善)」に紹介された.
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