精密マイクロフロー解析による微小生物遊泳機序の研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13450096
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 上村 慎治 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90177585)
• 研究分担者: 須田 斎 東海大学, 開発工学部, 助教授 (70216472) ; 小林 俊一 信州大学, 繊維学部, 助教授 (50225512) ; 高野 泰斉 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (00089111) ; 篠原 健一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (10292244)
• キーワード: マイクロマシン / マイクロフロー解析 / べん毛 / 繊毛 / シミュレーション / 運動モデル / 細胞運動解析 / 精子

研究概要

本研究では、レイノルズ数の小さな環境下での生物遊泳の機序を解明し、あたらしいデザインのマシンを創出するの上で、鍵となる基礎的な知見を得ることを目標にしている。上村は、光学的なセンサーを使い、精子の運動を簡便に定量化でき装置を開発し、ニジマス精子の運動解析に応用した。医学・水産学の分野での応用を目指して装置の改良を進めると同時に、微小流の解析、粘性抵抗計測への応用も試みつつある。高野は、シミュレーションの手法により、マイクロフローの挙動についてのアプローチを手がけた。ビブリオ菌べん毛の回転運動の粘弾性的な外力による応力解析から、前進・後進の運動において観察される速度差がべん毛の変形が影響しているのではないことを示すことができた。小林は、真核生物の鞭毛運動の屈曲メカニズムを模倣した新水中推進機構を開発し、工学分野への提供、および、屈曲機構の解明を支援する手段として提供することを目標としている。水中推進機構のシミュレーションでは、ウニの精子のような平面波動運動を再現させ、構造物の弾性、推力、遊泳速度の影響を検討した。次に拡大モデルを開発し、1.2Hzの屈曲周波数で約45mNの推力を発生できることを確認した。須田は、運動蛋白質が溶液内での分子挙動を解析することを目標にして、まず基板に固定したDNA鎖の分子運動を、放射光を用いて高精度で測定することに成功した。一方、運動蛋白質の運動特性を理論的に表す運動論に対して、分子間相互作用力を直接反映するような力学モデルの構築を行い、筋収縮における力・速度関係を明解に説明することが可能となった。篠原は、さらに小さな分子スケールでの運動解析のための新手法模索のために、分子変形によって蛍光強度の変わるポリマーを合成し、当プロジェクト実施期間内に応用することを目標としている。すでに、目的に合致したポリマーを作成し、1分子の観察が可能なことを確かめた。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki, Tani, Sutoh, Kamimura: "Imaging of the fluorescence spectrum of a single fluorescent molecule by prism-based spectroscopy"FEBS Lett.. (In press). (2002)
• [文献書誌] Goto., Masuda., Terada., Takano: "Comparison between observation and boundary element analysis of bacterium swimming motion"JSME Int.J.Ser.,C. 44. 958-963 (2001)
• [文献書誌] Kobayashi, Nakanose, Furihata, Morikawa: "Thrust force characteristics of propulsion mechanism modeled on bending mechanism of eukaryotic flagella in Water"JSME Int.J.Ser.C. 44. 946-951 (2001)
• [文献書誌] 須田 斎: "凝着力と結合寿命の関係から導かれる生体分子モータの運動諭"トライボロジスト. 46. 324-330 (2001)
• [文献書誌] Suda: "Origin of friction derived from rupture dynamics"Langmuir. 17. 6045-6047 (2001)
• [文献書誌] Sasaki, Okumura, Adachi, Suda, Taniguchi, Yagi: "Picometer-scale dynamical X-Ray imaging of single DNA molecules"Physical Review Letter. 87. 248102-248105 (2001)
• [文献書誌] Shinohara, Aoki, Kaneko, Oikawa: "Syntheses and enantioselective recognition of chiral poly(phenyleneethynylene)s bearing bulky optically active menthyl Groups"Polymer. 42. 351-355 (2001)
• [文献書誌] Shinohara, Yasuda, Kato, Fujita, Shigekawa: "Direct observation of the chiral quaternary structure in a π-conjugated polymer at Room Temperature"J.Am.Chem.Soc.. 123. 3619-36920 (2001)
• [文献書誌] Shinohara, Yamaguchi, Wazawa: "First observation of spectral fluctuation in a single molecule of a rigid-rod π-conjugated polymer"Polymer. 42. 7915-7918 (2001)
• [文献書誌] Shinohara., Kato., Minami., Higuchi: "Single molecule of a π-conjugated polymer slowly twinkles in solution at room temperature"Polymer. 42. 8483-8487 (2001)
• [文献書誌] Kato, Sugimoto, Shinohara, Tezuka, Kagotani, Inomata: "Magnetic poperties and microwave absorption properties of polymer-protected cobalt nanoparticles"Mater.Trans.. (In press). (2002)
• [文献書誌] Takano, Goto: "Analysi of small deformation of flexible helical flagellum of swimming bacteria"JSME Int.J.. (In press). (2002)