研究概要 |
本研究では,装着型力覚提示装置を仮想環境および実世界環境でおもにコミュニケーションに利用する技術を確立することを目的とした.このための基礎技術として,ネットワークを介した力覚情報の共有手法に関する検討,力覚情報提示のためのモデリング手法,実世界環境における情報提示のための空間位置計測技術などに関する検討を行った.これらの研究をとおして,力覚情報を利用したコミュニケーションの可能性を明らかにし,その新規性や有用性を示すことができたと考えている.視覚的に没入感の高いIPT空間を作業の舞台に設定したことにより,デスクトップ作業では実現できなかった,視覚・力覚が高度に融合した自由度の高いアプリケーションの可能性を開くことができた.本研究で構築した触覚サーバシステムは,触覚協調作業を行なうことを想定した設計理念により,モデル情報がダイナミックに変化するアプリケーションであっても十分に有効な触覚環境を提供することができる. 分散型システムでの協調作業は,モデルの更新が多地点間で行なわれるため,システム全体としての遅延ボトルネックが多地点間を結ぶ全ての通信路の中で最も遅延の大きい回線に依存する.これに対して,触覚サーバを利用した集中型のシステムでは接続するクライアント間でパフォーマンスの頭打ちが起きないような統制の取れたシステムを提供できる.触覚サーバシステムは遠隔協調作業において効果的な環境を提供することができる. これらの成果は,また,没入型多面ディスプレイを利用した仮想空間生成技術およびウェアラブルコンピューティングの分野の伸展にも寄与するものと確信している.
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