研究概要 |
この微細作業のキーテクノロジーとして,マスタスレーブ方式のマイクロマニピュレーションが知られている.マスタスレーブ方式は,異スケール間の微細作業では,人間が作業し易いレベルまで動きと力を拡大させる必要がある.その際,位置と力に関するスケーリング問題が重要となってくる.本研究では,人間中心的な観点からスケーリングを検討した. マイクロオペレーションとして縫合における運針術に注目し,スケーリング問題を検討した.まず,開発した運針用マニピュレータによる自動運針により,理想縫合針円における刺通抵抗(運針の際に針が受ける抵抗)を計測した.計測対象は豚の肝臓および練習用ウレタンフォーム(ウエット)である.両者の異なるプロファイルと同レベル微小力の刺通抵抗特性を明確にした. 次に,マスタスレーブ方式による遠隔操作を行った.位置のスケールは5倍,力のスケールは1倍,3倍および5倍を設定した.1倍の力スケールでは,十分なカ覚が得られないため(弁別閾以下),無拘束のフリー状態と同等となり,持針器長軸まわりの回転を(針先を出そうという思いから)過度に行う動作に抑制がかからない.また,5倍の力スケールでは,過大な反力により操作自体が乱される.これらに対して,3倍の力スケールは適度な力覚に基づく拘束感を伴いながら,運針動作が行えることがわかった.また,このような特定な値は個人差があり,さらに上肢のインピーダンス特性と深く関わっている可能性があり,今後インピーダンスマッチングとの関係を調べる必要があることがわかった. また,医療画像から幾何モデリング,さらに物理モデリングを行い仮想肝臓の構築を達成した.従来研究の詳細な検討を行い,医療画像としてVisible Human Dataを利用し,幾何モデリングにはGVF snakeおよびNUAGES,物理モデリングには有限要素モデルを採用した.今後,リアリティとリアルタイムの性能を上げる必要があり,前者に関しては,今回行った実対象での実験が貴重なデータを提供すると考えられる. さらに,微妙な操作感覚について検討するために,触覚センサ内蔵のソフトフィンガの開発を行った.
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