研究概要 |
以下に得られた結果をまとめる. (1)マスタスレーブシステムにおける知覚特性を考慮したスケーリングを取り扱った.知覚特性を考慮することは,特にマイクロオペレーションなどの人の感覚が重要になる作業において操作性を向上させる効果があると考えられる.本研究では,人の知覚特性として,弁別閾と感覚量に注目した.これらはそれぞれ,刺激が変化したかどうか,およびどのように変化したかに対応する値である.まず,感覚量がStevensのべき法則にしたがう場合に,スレーブ側での変化比を知覚可能にするためのスケーリング則を提案した.このスケーリング則を用いた場合に,与えられた最小の変化量を知覚可能にするための必要条件を導いた.指先における力の弁別閾測定を行い,、この弁別閾がWeberの法則にしたがっていることを確かめた. (2)マイクロオペレーションの代表例として,手術を取り上げた.まず,高臨場感手術システムの重要な機能として,手術シミュレータの構築を行った.具体的には,幾何・物理モデリングならびに位相変形を伴う切断・刺通モデリングのアルゴリズムを構築し実装した.なお,インタラクティブな手術シミュレーションを狙っており,リアリティおよびリアルタイム性のトレードオフを重要視した. さて,運針術(縫合術)は特定の手術術式ではなく,すべての術式に共通する基本手技である.そこで,専用の運針スレーブマニピュレータを開発し,刺通抵抗を実測した上で,抵抗生成のメカニズム等に関して検討した.刺通抵抗が小さいことは,組織の損傷を最小限に抑えることを意味しており,大変重要なことである.また,運針動作に着目した遠隔力覚臨場感操作を実現した.特に,どのようなスケーリングパラメータ(位置,力)が最適かを実験的に検討した.このとき,術者個人が操作し易いと感じるスケーリングパラメータを重視した.また,初心者に対する補助動作(モーションガイド)に関しても検討し,効率的な技術伝達を試みた.
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