研究概要 |
本研究では触覚を用いた代表的動作であり,かつ日常生活の基本的動作でもある物体の把持動作に焦点を当て,触覚入力がどのように知覚され,把持力が制御されているのかを実験心理学的手法を用いて明らかにすることを目的としている。また,そこから得られた知見を基に,人の触覚情報処理の工学的応用を目指す。 今年度は、画像処理および力覚センサをベースとした、初期滑りと把持/負荷力の同時計測装置を開発した。被験者の指腹部にドットパターンを描画し、これを把持物体内のカメラより計測することで、接触面内に生じる滑りの計測を可能とした。把持/負荷力の計測は、把持面を6軸力センサで支持することで実現した。この装置、59Wx46Dx130H[mm],270[g]と小型・軽量であり、被験者は無理なく計測装置を摘み上げることができる。また、装置下部に負荷を挿入したり、装置表面を油、透明ゴムなどでコーティングすることにより、装置質量/表面摩擦係数も変化させることができる。これらは、異なる装置条件において、自然な把持運動の計測を行うためには極めて重要な機能である。また、画像処理30[Hz]、力と加速度のサンプリングは100[Hz]で行うことができる。これは、初期滑りの発生を計測するのに十分な能力である。 開発した計測装置を用いて、異なる接触状態を与えた指先接触面の計測を行い、この装置が有効に機能することを確認した。すなわち、指先に接線方向力を加えた時の初期滑りの発生は、弾性体接触理論に基づく予測と定性的に一致するものであった。また、指先にトルクを加えたときにも初期滑りと等価な現象が発生することを確認した。
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