指先の初期滑りと把持/負荷力の同時計測に基づく人の把持力制御機構のモデル化

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13450104
• 研究機関: 奈良先端科学技術大学院大学
• 研究代表者: 小笠原 司 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (30304158)
• 研究分担者: 松本 吉央 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教授 (00314534) ; 中村 恭之 和歌山大学, システム工学部・情報通信システム学科, 助教授 (50291969) ; 今井 正和 鳥取環境大学, 情報システム学科, 教授 (60193653) ; 上田 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助手 (30346308)
• キーワード: 把持運動 / 弾性体接触 / 初期滑り / 固着率 / 触覚情報処理 / 把持力制御

研究概要

本研究では触覚を用いた代表的動作であり,かつ日常生活の基本的動作でもある物体の把持動作に焦点を当て,触覚入力がどのように知覚され,把持力が制御されているのかを実験心理学的手法を用いて明らかにすることを目的としている。また,そこから得られた知見を基に,人の触覚情報処理の工学的応用を目指す。
昨年度までの研究で、把持した物体の滑り始めの現象、すなわち、初期滑りの状態においては、接触面内に、滑る領域と滑らない領域が存在することが確認された。そして、この面積比が滑りを伴う運動においては重要な役割を示していることが推察された。そこで、この面積比を固着率と定義し、その変化に着目して、昨年度までに開発した初期滑りと把持/負荷力の同時計測装置を用いて引き続き把持運動の計測を行った。その結果、どの被験者でも十分慣れた状態では、固着率が同程度の値に落ち着くことが明らかになった。このことから、人の把持力制御法として、指先固着率知覚に基づく把持力制御仮説を提案できる。すなわち、固着率に代表される指先接触状態が一定の値に落ち着くように力を制御することで、適切な把持力を実現するという仮説である。
さらに、この把持力制御仮説の有効性を検証するため、初期滑りを利用した弾性体の把持力制御システムに適用した。半球状の弾性体の把持を1自由度のグリッパで行うシステムを試作した。弾性球と剛体平板の接触モデルの解析から、接触面の半径と偏心度、さらに接触面に働く接線方向力を計測することで滑り余裕を求めることができ、接触面の摩擦係数が未知であっても任意の滑り余裕で把持力制御が可能であることを、シミュレーションとグリッパによる把持力制御実験により示した。

研究成果

• [文献書誌] Yuichi Kurita, Atsutoshi Ikeda, Jun Ueda, Yoshio Matsumoto, Tsukasa Ogasawara: "A Novel Pointing Device Utilizing the Deformation of the Fingertip"Proceedings of 2003 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems. 13-18 (2003)
• [文献書誌] 池田篤俊, 栗田雄一, 上田淳, 小笠原司: "指紋変形を利用した新しいポインティングデバイスの開発"ロボティクス・メカトロニクス講演会'03講演論文集. (CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] 池田 篤俊, 栗田 雄一, 上田 淳, 小笠原 司: "指紋変形を利用した新しいポインティングデバイスの開発-ずらし動作における指紋変形の解析"第21回日本ロボット学会学術講演会予稿集. (CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] 栗田 雄一, 上田 淳, 小笠原 司: "CPGによるヒト手指の回転操作時における接触パターンの生成"第21回日本ロボット学会学術講演会予稿集. (CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] 上田淳, 池田篤俊, 栗田雄一, 小笠原司: "指紋変形を利用した新しいポインティングデバイスの開発"ヒューマンインタフェースシンポジウム2003論文集. 251-254 (2003)
• [文献書誌] 池田篤俊, 栗田雄一, 上田淳, 松本吉央, 小笠原司: "初期滑りセンサを用いた弾性体の把持力制御"第4回SICEシステムインテグレーション部会講演会講演論文集. 424-425 (2003)