電力システムの高信頼度・高性能化に限流器は必須とされ、さまざまな方式が研究されているが重要な要件である高速限流動作及び超伝導復帰のいずれも実用レベルの仕様を満たしていない。筆者らはかねてより限流器特性の向上に関して研究を進めてきた。その過程で、系統故障に際して自動的かつ迅速に限流動作をし、限流動作終了後速やかに超伝導復帰が可能な新しい方式の磁気遮蔽型限流器を考案した。本研究計画では、それを実験的に検証し配電系統に適用可能な限流器の技術的基盤を確立することを目的する。そのため、本年度は考案した限流器と等価な小型モデルを試作し、自動的かつ迅速な限流動作の実験的検証に重点をおいて研究を行った。磁気遮蔽体として、ビスマス系超伝導リングの両面に厚さ50μmのアルミニウムヒータ(約15μmのアルミナ電気絶縁体コーテイング)を高熱伝導度のエポキシ樹脂で接着したものを使用した。ヒータは限流コイルと共通の鉄心上に設けた第3次巻線に直列に接続した。実験では、限流コイルへの印加電圧を変化して超伝導リングの発生電圧および第3次巻線の誘起起電力を測定解析した。シミュレーションの指摘どおり印加電圧とともにヒータの発生熱が急速に増大した。そして、印加電圧65Vのとき約2サイクルで超伝導リングは臨界温度に達し、ノーマル転移するという所期の良好な結果を得た。これにより迅速な限流特性の実現性を明らかにできたが、今後更なる高速化を追及していく。また、次年度はそれに加えて高速超伝導復帰特性について検討を行い、本研究計画の目標を達成する。 なお、分担者の一人(新居昭雄)は平成13年8月に逝去したためそれ以降研究に参加できなくなった。しかし、同氏は教務職技官であったため本計画は大きな影響を受けることなく当初の計画どおり実施できた。
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