本研究計画では、系統故障に際して自動的かつ迅速に限流動作をし、限流動作終了後速やかに超伝導復帰が可能な新しい方式の磁気遮蔽型限流器について設計基盤を明確にすることを目的とした。本年度は磁気遮蔽体の積層数を増加した小型限流器を試作して、前年度に引き続き限流諸特性の実験研究を行った。限流特性の印加電圧依存性を明確にするため本年度は印加電圧を実験装置の限界である約100V(実効値)まで変化させた。本限流器では、超伝導リングに低抵抗の加熱用ヒータを貼っているため限流動作時に所要の限流抵抗値を得ることは困難である。そのため、限流動作前及び動作中に超伝導リングの電流をロゴスキーコイルで測定して限流動作を検出する独自の方法を検討した。その結果、限流コイルの印加電圧を約80Vまで増加すれば系統故障発生後1サイクル以内で速やかに限流できることを明らかにした。この電圧は配電系統用実規模限流器に換算すると6.6kV級に相当するものである。これらの実験結果を活用して実規模限流器のコンピュータシミュレーション解析を行い実験結果とよい一致を得た。 本年度は、研究計画のもう1つの目標である限流動作後の高速超伝導復帰特性について詳細に検討を行った。そのため、限流器に用いる超伝導リングの積層構造を模擬した液体窒素への熱伝達特性評価用試料を試作して超伝導リング間の間隙構造と熱伝達特性の相関を詳細に評価解析した。その結果、良好な超伝導復帰特性を可能にする超伝導リング冷却構造の設計指針を明らかにした。これにより初めて速やかな超伝導復帰特性をもつ限流器の実現可能性を示した。 以上、平成13年度及び14年度の研究により所期の高性能磁気遮蔽型超伝導限流器の設計基盤を明確にすることができた。
|