バルク超伝導体の特性評価と応用のための基礎的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13450116
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 石山 敦士 早稲田大学, 理工学部, 教授 (00130865)
• 研究分担者: 植田 浩史 早稲田大学, 理工学部, 助手 (10367039) ; 津田 理 山口大学, 工学部, 助手 (10267411) ; 若尾 真治 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (70257210)
• キーワード: バルク超伝導体 / 着磁特性 / 磁化特性 / 磁気浮上特性 / 磁気搬送装置 / リニアアクチュエータ / 有限要素法解析

研究概要

1.浮上搬送装置の開発:超伝導体の磁束ピンニング効果を利用した水平方向に自由に動くことが可能な浮上搬送装置を提案した。本年度は、応用上重要となる浮上力・復元力の評価実験を行い、最適な永久磁石配置や着磁条件を明らかにした。また、3次元電磁界解析プログラムを開発し、実験と解析から磁界の空間分布や超伝導体内の電磁現象と浮上特性の関係を明らかにした。さらに開発した解析プログラムを用いて、浮上高さ16mm、積載可能重量200kgの浮上搬送装置の設計を試みた。
2.リニアアクチュエータの開発:バルク超伝導体を二次走行子とする誘導始動型短二次リニア同期アクチュエータの開発を進めてきた。本年度は、試作装置について、トルク負荷角特性および動作特性(同期引込み特性等)の実験を行い、数値解析に基づく特性評価を行った。そして、バルク超伝導体の大きさや数、配置の影響を明らかにした。
3.バルク超伝導体の磁化特性:着磁したバルク超伝導体をモータ・アクチュエータや浮上搬送装置に応用する場合、変動する磁界に曝されるため、そのときの磁化特性の変化を明らかにする必要がある。本年度は、変動磁界の大きさや周波数の影響を実験により調べた。その結果、50Hz程度の周波数になると急激な補足磁界の減衰が観測された。その原因を、新たに開発した数値解析プログラムにより明らかにした。本プログラムは、超伝導体の不可逆温度を考慮した超伝導特性に基づく解析ができ、バルク超伝導体内の電磁現象、発熱、温度分布が計算できる。
以上、3年間の研究を通じて、浮上搬送装置およびリニアアクチュエータの開発に必要となる基礎特性の把握とそれに基づく実機設計へ向けた指針を明らかにすることができた。また、特性評価・設計に有力なツールとなる数値解析プログラムを開発した。これらの成果は、他のバルク超伝導体応用機器の開発・実用化に対しても有効である。

研究成果

• [文献書誌] H.Ueda, N.Itoh, A.Ishiyama: "Trapped Field Characteristic of HTS Bulk in AC External Magnetic Field"IEEE Trans.on Appl.Supercond.. vol.13, no.2, part 2. 2283-2286 (2003)
• [文献書誌] T.Akamatsu, H.Ueda, A.Ishiyama: "Characteristics of levitating X-Y transporter using HTS bulks"IEEE Trans.on Appl.Supercond.. vol.13, no.2, part 2. 2161-2164 (2003)
• [文献書誌] A.Takahashi, H.Ueda, A.Ishiyama: "Trial production and experiment of linear synchronous actuator with field-cooled HTS bulk secondary"IEEE Trans.on Appl.Supercond.. vol.13, no.2, part 2. 2251-2254 (2003)
• [文献書誌] R.Kamoshida, H.Ueda, A.Ishiyama: "A new type of active-Maglev system using YBCO bulk and multiple electromagnets"IEEE Trans.on Appl.Supercond.. vol.13, no.2, part 2. 2157-2160 (2003)
• [文献書誌] H.Ueda, A.Ishiyama: "Dynamic characteristics and finite element analysis of magnetic levitation system using YBCO bulk superconductor"Superconductor Science and Technology. vol.17, issue 5. S170-S175 (2004)
• [文献書誌] A.Sugawara, H.Ueda, A.Ishiyama: "Preliminary experiments of a tubular linear actuator in the vertical direction using YBCO bulk"Superconductor Science and Technology. vol.17, issue 5. S176-S179 (2004)
• [文献書誌] 藤島 寧, 若尾 真治, 松岡 幸一, 近藤 稔: "応答曲面近似法による機器最適化計算の高速化"電気学会論文誌. Vol.123-D, No.4. 371-378 (2003)
• [文献書誌] Y.Fujishima, S.Wakao: "Surface Charge Analysis in Eddy Problems"IEEE Trans.on Magnetics. Vol.39, No.3. 1123-1126 (2003)
• [文献書誌] 近藤 稔, 近藤 圭一郎, 藤島 寧, 若尾 真治: "リラクタンストルクを有効利用した鉄道車両駆動用永久磁石同期電動機の回転子設計"電気学会論文誌. Vol.124-D, No.1. 124-130 (2004)
• [文献書誌] M.Tsuda, M.Tamura, H.Yamada, N.Harada, T.Hamajima: "Lift-to-weight Ratio Dependence of Lift and Stability in Active-maglev system"IEEE Trans.on Appl.Supercond.. vol.13, No.2. 2138-2141 (2003)