今までの経験から酸化亜鉛薄膜は高温成長すると結晶性の優れたものができることが分かっているが、産業応用上は、絶縁層を積層することもあって、プラスチックやガラス基板上に低温で薄膜を成長することが必要になる。そこで、酸化亜鉛/ゲート絶縁層/ガラス基板というボルトゲート構造のトランジスタを作製し、移動度やリーク特性といったトランジスタ特性が優れているトランジスタ作製条件を探索した。その結果、プロセス温度の低温化が実現した(300℃〜室温)。そして、ゲート絶縁層にペロブスカイト酸化物と窒化シリコンの二層構造を用いることによって、ゲートリーク電流も実用レベルの1pAのオーダーまで低減した。さらに、電界効果移動度も約3cm^2/Vsと現在実用化されているアモルファスシリコントランジスタを一桁上回る値を達成できた。現在、この成果に関わる特許を4件出願中であり、論文も地下じか投稿予定である。 一方、単一基板上に異なるデバイスパラメータを持つトランジスタを作製できる薄膜作製装置を購入し、立上げがほぼ完了した。格子整合基板上に高温で作製した単結晶なみの品質の酸化亜鉛薄膜を半導体チャネル層としたトップゲート型トランジスタの作製を開始し、プロセスを確立しつつある。 実験と並行して行っている酸化亜鉛トランジスタのデバイスシミュレーションの結果からは、トランジスタの移動度の低下の主な原因として、薄膜の結晶の品質より結晶粒界の存在が大きいことがわかってきた。
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