研究概要 |
近年、半導体微細加工技術の向上により、単電子トランジスタ(Single Electron Transistors, SETs)などの量子効果デバイスを開発しようとする研究が活発になされている。それらのデバイスを作製する手段として、イオンビームや電子ビームなどを用いた微細加工技術を補完する加工技術として近年注目を集めているのが、材料構成原子の格子定数の違いによる歪みによって特定の極微細構造を自己形成する、「自己組織化」現象である。しかし、自己組織化成長させたInAs量子ドットは、ランダムに多数成長するため、単電子デバイスへ応用するためには、個々のドットの位置制御が不可欠である。そこで本研究では、単一電子デバイスへの応用を見据え、我々が現在までに開発してきた原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope : AFM)を用いて陽極酸化を行う手法を用いた。 まず、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy : MBE)法を用いたInAs量子の成長を行い、量子ドットの密度低下およびマイグレーションを試みた。密度低下には、InAs量子ドットを成長させた状態での基板温度より40℃〜70℃程度上昇させた。量子ドットが理論的にマイグレーションしてドット同士が結合したり蒸発したりすることにより、密度が低下することが確認できた。 次にAFM陽極酸化法を用いてGaAs基板上に微細加工を行い、ナノテンプレートを作製して、その上にInAs量子ドットを成長させてその場アニールをすることにより、InAs量子ドットの位置制御を試みた。その結果、InAs量子ドットがその場アニールによってマイグレーションし、AFM陽極酸化法で加工したナノホールに移動する現象が確認できた。
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