マイクロ波プラズマCVD(化学気相堆積)法により作製したダイヤモンド薄膜上に堆積した白金薄膜の膜厚、並びに、水素含有ガスを用いたマイクロ波プラズマの照射条件を制御することにより、白金薄膜の自己組織化現象を生じさせ数nmスケールの球状白金微粒子を制御性良く形成できることを明らかにした。このような白金微粒子は、その大きさ(直径)が約20nm以上になると多結晶的な結晶構造を取るのに対し、10nm以下の場合には単結晶構造的になり、下地ダイヤモンドと形成された白金粒子との間には相関のある結晶方位を有することが判明した。また、この自己組織化白金微粒子は格子内に水素を吸蔵しており、そのため格子定数が約30%伸びていることが、2次イオン質量分析法(SIMS)及び高分解透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた解析により明らかとなった。さらに、この水素吸蔵白金微粒子を真空下で加熱処理すれば、吸蔵水素が白金微粒子から離脱し、格子定数は元来の白金格子の値に戻ることが同様な解析により分かった。また、昇温脱離法による解析により、この吸蔵水素の脱離は600℃〜800℃で生じることが判明した。一方、白金微粒子をCVDダイヤモンド薄膜中に埋め込んだ後、再び同様な白金薄膜の自己組織化を行うことにより、ダイヤモンド-白金微粒子からなる多層積層構造を形成できることを示した。また、このような積層構造に対し、ダイヤモンド層のみを選択的に酸素プラズマを用いてエッチングすることにより、試料表面上に存在する白金微粒子密度を増大できることも示した。他方、自己組織化白金微粒子中の吸蔵水素の場合と比較し、ダイヤモンドと白金微粒子との界面近傍には水素は存在できるが、ダイヤモンド結晶薄膜内にはあまり水素が含有されないことが示唆された。
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