研究概要 |
サイズ揺らぎを極力抑制したナノスケール狭チャネルMOSFETを,シリコンドットメモリに応用し,量子効果による保持時間の改善を達成することに成功した.デバイスの作製には,分子量の少ないレジストによる電子ビーム露光とドライエッチングを用い,チャネル幅が10nm以下のシリコンチャネルを制御性よく作製した.このナノスケール狭チャネルを有し,ゲート酸化膜中にシリコン量子ドットを埋込んだシリコンドットメモリを試作し,そのメモリ特性と保持時間を評価した.シリコン量子ドットは低圧CVDで形成し,その直径は約8nmである.この量子ドットに電子が注入されメモリの記憶ノートとして働く.実験の結果,チャネル幅が20nm程度以下になると,しきい値電圧シフトが大きく,保持時間も長くなることが実験にぶり実証された.このメモリ特性改善の理由を調べるため,量子効果を考慮したメモリ特性のシミュレーションを行った.シミュレーション結果と実験結果を比較することにより,しきい値電圧シフトの増大はナノスケール狭チャネルにおける古典的なボトルネック現象,保持時間の増大はナノスケール狭チャネル中における電子の量子化に起因することが明らかとなった.シリコンドットメモリは,既存の不揮発性メモリであるフラッシュメモリを置き換える可能性のあるナノデバイスであり,チャネル幅をナノスケールにすることによりメモリ特性が改善するという本研究の結果は,本メモリの有効性を高めるとともに,ナノ構造の積極利用が将来的に極めて重要であることを示すものである.
|