研究概要 |
変調光検波方式とは,特定の周波数で強度変調をかけた光源で被写体を照明し,その反射光から変調成分のみを検出するものである.イメージセンサでこれが実現できれば,背景光に依存しない撮像が可能となる.例えば,直射日光が差し込むような照明施設が充分でない環境下での製品検査ラインへの適用や,ITSなど車載関連などのさまざまな分野に応用できると予想される. 我々は,CMOSイメージセンサの画素回路に,2つの信号電荷蓄積部を設けることで,変調光を電荷蓄積モードで検波可能にする電荷振り分け転送方式を提案している.この方式は従来の方式に比べ,感度やS/Nの向上,また,画素内にキャパシタを用いないため画素サイズの縮小が可能となる. 0.35μm標準CMOSプロセスを用いて試作した25μm□画素回路で,100μW/cm2の定常光の下で5kHzの変調光を入射し,変調光検波動作を確認した.また,0.6μm標準CMOSプロセスを用いて64x64画素の変調光検波方式CMOSイメージセンサを試作し,変調光成分のみの画像出力を確認した. 本方式は汎用プロセスで設計したセンサで変調光検波動作をさせるために受光部にフォトゲートを用いている.これは信号電荷をFDに充分転送できるようにするためである.しかし,汎用プロセスの制限でフォトゲートの両サイドに寄生のn-diffが存在するため信号電荷をFDに完全転送できる構造ではないと考えられる.現在はCMOSセンサ用のプロセスで埋め込みPDによる信号電荷完全転送構造などが研究されており,将来これを用いれば変調光をより高精度に検波できると考えられる.
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