1.これまでに我々が開発したFDTD法を用いた数値解析法により理論的に解析可能な代表的音響人工結晶(ソニック結晶)を実験的に実現し、そのフル・バンドギャップ特性を実測した。ソニック結晶として独特の気体中固体散乱体配列と、典型的なフォトニック結晶(空気中GaAs誘電体配列)に対応すると我々が指摘している寒天中空気円柱配列から成るソニック結晶に注目している。さらに、2次元波動伝搬を実現する方法として、スラブ構造を新しく採用した。 (1)空気中アクリル円柱配列:ほぼ理論的に予測される周波数帯(6.8kHz〜9.5kHz)において平面波の伝搬方向に依存しないバンドギャップ、すなわちフル・バンドギャップが-25dBの深さで実験的にも得られた。この場合には、2次元波動伝搬を実現するために、円柱の底部と頭部の面にグラズウール吸音体を用いている。 (2)空気中アルミニウム金属円柱配列:2次元波動伝搬を実現するために、新たにスラブ型音響伝搬路に2次元アルミニウム円柱配列を形成することを考案した。その伝搬特性を本補助金で購入した任意波形発生器とディジタルオシロスコープを用いたトーンバースト法により高S/Nで測定した。15kHz〜18kHzの周波数帯におい-50dBもの深さで、ほぼ理論的に予測される通りのフル・バンドギャップを観測した。 (3)寒天中空気円柱配列:寒天ゲルを充填したスラブ型超音波伝搬路に12×12個の直径6mmの空気円柱配列を形成した。圧電振動子を埋め込んで75kHz帯の超音波伝搬を計測する基礎的な技術を習得した段階である。 2.これまでの数値解析は、縦波のみを考慮に入れたものであったが、実用的なソニック結晶としては、金属、セラミックスまたは誘電体結晶などの固体ホストが不可欠であるため、横波も含めた音響波動伝搬を解析することのできるFDTD法による差分計算法を確立した。次年度にこのプログラムにより数値解析を行う準備ができた。 3.ソニック結晶とフォトニクス結晶の本質的同一性と実質的相違について明確にする目的で、両者に共通なパラメータ空間を考案し、それを用いて両者を同じ空間で分類した。
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