研究概要 |
音響人工結晶と、それを用いて構成される音響導波路の実現のために基礎となる有意義な成果をあげた。それらを列挙する。 (1)2次元音波の音圧と粒子速度の直交座標軸成分が電磁波のTE波およびTM波の電界と磁界の成分に、ならびに媒質パラメータの間に、それぞれの規格化量において完全な対応関係があることを見出した。 (2)上記の対応関係から、2次元ソニック結晶とフォトニック結晶に共通な媒質パラメータ空間を導入することができた。これを用いて具体的に、ソニック結晶とフォトニック結晶を対応させた。 (3)音響波動伝搬を数値解析する音波FDTD法の正確で安定したプログラムを完成し、さらに、それを発展させた弾性波FDTD法を実現した。完全吸収境界を実現し、数値分散を量的に評価し、さらに動画表示による現象の理解と考察を可能にした。 (4)空気中アクリル樹脂円柱配列ソニック結晶を製作し、格子定数24.0mm,円柱半径10.2mmで、7.0kHz〜9.4kHzにわたる理論値とよく合うフル・バンドギャップを観測した。次に、空気中音響導波路スラブ構造の中にアルミニウム円柱を配列したソニック結晶を製作し、格子定数12.0mm,散乱体半径5.0mmで、14.1kHz〜18.7kHzにわたる理論とよく合うフル・バンドギャップを観測した。 (5)空気中アクリル樹脂円柱配列ソニック結晶により直線導波路ならびに急峻な直角曲がりをもつ導波路を製作し、その漏れ波の大きさから閉じ込めを実験的に検証すると共に、FDTD法により、音波はエバネッセント波を伴って実質的に導波路の2倍程度の幅に広がるが、直線導波路のみならず急峻な直角曲がり導波路においても、結晶外に漏れることは無く、導波路に沿って導波される動的様子を可視化しながら評価した。 (6)空気中アクリル樹脂円柱配列ソニック結晶導波路と、寒天・ゲル中空気円柱配列ソニック結晶導波路の過渡特性を定量的に評価した。
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