本研究は超伝導技術に基づく受信機フロントエンドを開発し、広帯域幅および高感度性の実証を目指すものである。本年度は集中定数型アナログフィルタの設計・試作および高温超伝導ディジタル回路用ランプエッジ型ジョセフソン接合の品質向上についての検討を行った。得られた知見を以下に示す。 1.集中定数型アナログフィルタの設計・試作: 超伝導薄膜を用いたアナログコンポーネントのうち、小型化が可能な集中定数型フィルタの設計を行った。シミュレーションにより中心周波数6GHzにおいて帯域幅200MHzまでの3段のバンドパスフィルタの設計を行った。これに基づいて試作したフィルタはシミュレーションとはやや異なる特性を示したが、その原因として素子間の結合が指摘され、改善の方向性を明かにすることができた。また、誘電体を用いた中心周波数および帯域幅の可変性について検討した。 2.高温超伝導ディジタル回路用ランプエッジ型ジョセフソン接合の品質向上: ディジタル回路集積化のために必要な接合特性の再現性・均一性向上のための検討を行った。接合の中間層となるランプエッジ(斜面)面の観察より、ランプエッジ上部と下部でのエッチングのされ方の違いが示唆され、これが特性ばらつきの一因になっている可能性が指摘された。また、接合特性の再現性に必要な超伝導薄膜の再現性を向上させるため、超伝導薄膜をスパッタリング法で作製する際のガス分圧を四重極質量分析計でモニタすることを試み、薄膜の再現性向上にこのガス分圧モニタが有効であることを確認した。
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