研究概要 |
本研究は超伝導技術に基づく受信機フロントエンドを開発し,広帯域幅および高感度性の実証を目指すものである。得られた知見を以下に示す。 1.チューナブルアナログバンドパスフィルタの開発: 超伝導薄膜を使ったチューナブルフィルタを発するため,まず基本要素であるマイクロストリップライン型共振器の設計・試作を行った。チューニングはフィルタ近傍に配置した誘電体板をアクチュエータで移動させる機械的方法とした。実験では低損失性の他に中心周波数の3-15%程度の大きな可変量を観測した。さらに柔軟なチューニングできるように集中定数型3段バンドパスフィルタを設計し,シミュレーションにおいて中心周波数と帯域幅が独立に大きく可変であることを確認できた。 2.AD変換器の設計: 無線信号を直接サンプリングしディジタルデータに変換するAD変換器を数値計算によって解析,設計した。標本化と量子化を別に行うことにより高次化せずに高性能化できる方式を考案した。その回路構成への高温超伝導体回路の適用可能性を検討した。 3.ディジタル回路作製基盤技術の開発: ディジタル回路の中心となるジョセフソン接の作製技術に関して,障壁層形成時に微量の元素(Pr, Ga)を添加することによりリークを劇的に抑制することに成功した。ランプエッジ型接合の特性ばらつきの一因として,障壁層の膜厚方向での不均一性が示唆された。超伝導薄膜の再現性確保のために,温度むらの低減化やガス分圧モニタの導入などにより,薄膜堆積時の作製条件の見直しを進めた。 4.高温超伝導回路集積技術の検討: 集積化の際に必要となる超伝導層と絶縁層の多層化,および超伝導コンタクトについて検討し,超伝導回路に使用可能なものが得られた。
|