研究概要 |
感性情報は主観的であるという前提でスタートした感性情報処理研究では、アンケート調査をベースとした評価が中心であった。しかしこのような研究は、人間の感じ方を正しく表現したものとは言い難い。その原因の一つは,主観評価の不確定性にある.同じ被験者であっても温度や湿度などの環境状態や,健康状態が変化することにより評価結果も変化することがある.この問題について最も重要な問題は、実験時の被験者の内面的な要因によって結果が大きく異なる場合もある.その一つが被験者の実験対象に対する注意の問題である.例えば実験時,被験者の注意が評価対象に向いていないとすれば,その主観評価結果は評価対象に対する真の結果とは言い難い.これに対して我々人間は、感動、苦痛などの感情を抱く際、背筋がぞくぞくする、顔がほころぶ、息を呑む、手に汗を握るなど表情変化や生理的表現を伴う。そこでここでは生理・知覚センサにより主観的感性情報を客観的に捉える計測の研究を行った。ここで取組んだ研究は、呼吸、鼻部皮膚温、脈波、皮膚コンダクタンスであった。研究対象は、テレビ視聴、計算と音楽刺激の「ながら環境」、船舶操舵シミュレータ操作時、3DVR環境での蛍狩りなど、さまざまな作業環境において、主観的印象やストレスが、いかにして客観的にはかれるかという取組を行い、所期の成果を得た。また音楽作品の即興的創作を通じて人間の緊張や快感が表面皮膚電位と脈波に現れることを、インタラクティブミュージックのライブコンサートで確認した。これは単にコンサートステージだけでなく、リハーサル中や、聴衆の側にも同様な生理的変化が発生したことを確認している。
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